「痩せれば糖尿病は治る?」──肥満と糖尿病の本当の関係を研究機関の視点で考える
「糖尿病は痩せれば治るんでしょう?」
外来や健診の場で、大学病院の医師や研究者がとてもよく受ける質問です。
たしかに、糖尿病と体重、特に“肥満”との間には深い関係があります。ですが、「痩せればすべて解決」というほど単純な話ではありません。
今回は、大学病院や研究機関がどのような視点で肥満と糖尿病の関係を捉えているのかを、できるだけやさしく、生活者目線でお話ししてみたいと思います。
肥満はなぜ糖尿病につながるのか
研究の世界では、2型糖尿病は「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌低下」という2つの要素で説明されます。
特に肥満、なかでも内臓脂肪型肥満は、インスリン抵抗性を強める大きな要因です。
内臓脂肪は、ただの“余った脂肪”ではありません。
実は、さまざまな炎症物質やホルモン(アディポサイトカイン)を分泌し、これが筋肉や肝臓でのインスリンの働きを邪魔してしまうのです。
大学病院の研究では、
- 肥満が進むほどインスリンが効きにくくなる
- それを補うために膵臓が無理をする
- やがて膵臓が疲れ、血糖が下がらなくなる
という流れが、はっきりと示されています。
では、痩せると糖尿病は「治る」のか?
ここがとても大事なポイントです。
研究機関の立場では、
「治る」というより「改善・寛解する可能性が高まる」
と表現されます。
体重を減らすことで、
- インスリン抵抗性が改善する
- 血糖値が下がりやすくなる
- 薬が減ったり、不要になる人もいる
こうした良い変化が起こるのは事実です。
実際、大学病院の臨床研究では、体重の5〜10%を減らすだけでも血糖コントロールが大きく改善するケースが多く報告されています。
ただし、
- 発症からの年数
- 膵臓の機能がどれだけ残っているか
- 遺伝的な体質
によって、効果には個人差があります。
「太っていない糖尿病」の存在
研究現場では、もう一つ重要な事実も知られています。
日本人には、肥満でなくても糖尿病になる人が少なくありません。
これは、欧米人に比べて日本人は
- インスリンを分泌する力がもともと弱い
- 少しの体重増加でも血糖が上がりやすい
という体質を持つ人が多いためです。
そのため大学病院では、「体重だけ」で糖尿病を判断することはせず、
食事内容、運動量、生活リズム、ストレスなども含めて総合的に評価します。
研究機関が大切にしている考え方
大学病院や研究施設の医師たちが、患者さんによく伝える言葉があります。
「糖尿病は“体重の病気”ではなく、“生活全体の病気”です」
痩せることは確かに大切ですが、
それ以上に大切なのは、
- 無理のない食習慣
- 続けられる運動
- 睡眠やストレスとの付き合い方
こうした日常の積み重ねです。
短期間で体重を落としても、生活が元に戻れば血糖も戻ってしまいます。
研究の世界では、「続けられる変化」こそが最大の治療だと考えられています。
まとめ:痩せることは“ゴール”ではなく“きっかけ”
肥満と糖尿病は、たしかに深く関係しています。
そして、体重を減らすことは糖尿病改善への大きな一歩です。
でもそれは、ゴールではありません。
自分の体と向き合い、生活を少しずつ整えていくためのきっかけです。
焦らず、比べず、できることから。
それが、大学病院の研究者たちが行き着いた、いちばん人にやさしい結論なのかもしれません。

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