試合前、ボクサーたちの減量方法
計量前、地獄の一週間 ― ボクサーの「水抜き」という極限
静まり返ったホテルの一室。
エアコンは止められ、空気は重く、肌にまとわりつくように湿っている。
ベッドの上には、汗で濡れたサウナスーツ。
体重計の上に立つ男の頬は削げ、目は落ち窪み、唇はひび割れている。
それでも彼は、水を飲まない。
プロボクシングの世界では、試合前日の計量がすべてだ。
リングに上がるより前に、すでに戦いは始まっている。
たとえば、世界的スターである
サウル・アルバレス(カネロ) や
フロイド・メイウェザー。
トップレベルの選手たちは、通常体重から5〜10kgを1週間で落とすこともある。
だが、それは脂肪ではない。
彼らが削っているのは「水」だ。

水を操る技術
計量1週間前。
選手はまず炭水化物を断つ。
グリコーゲンが枯渇すると、体は一気に水分を放出する。
なぜなら、グリコーゲン1gに対し、約3gの水が結びついているからだ。
つまり、糖質を抜くだけで、体内の水がごっそり抜ける。
さらに、試合1週間前から大量の水を飲む。
1日6〜8リットル。
体は「水が常に入ってくる」と錯覚し、排出モードになる。
そして、計量2日前。
――水を止める。
体はまだ排出モードのまま。
飲まないのに、出続ける。
体重は一気に落ちる。
サウナの中の孤独
サウナスーツを着込み、ランニング。
風呂に入り、タオルで全身を包む。
汗は止まらない。
視界がぼやける。
意識が遠のく瞬間もある。
それでも、体重計の数字が目標に近づくたびに、彼らは安堵する。
計量直前、あと300g足りない。
最後の300gを削るため、再びサウナへ。
そして、ついに目標クリア。
しかし、それは勝利ではない。
本当の勝負は、ここから始まる。
計量後の逆襲
計量を終えた選手は、すぐに補給を始める。
電解質入りドリンク
蜂蜜
白米
パスタ
塩分
24時間で5kg戻すことも珍しくない。
つまり、1週間で10kg落ちても、
そのほとんどは水とグリコーゲン。
脂肪はほとんど減っていない。
それでも、この一週間は命を削る作業だ。
実際、過去には急激な減量で命を落とした格闘家もいる。
水を抜くとは、
生命活動の基盤を削ることなのだ。
彫刻のような筋肉、ボディビルダーの世界
ピークウィーク ― ボディビルダーが身体を彫刻にする7日間
大会会場の舞台裏。
筋肉は岩のように硬く、皮膚は薄紙のように張り付いている。
これは単なる筋肉ではない。
計算し尽くされた芸術作品だ。
その舞台に立つ選手たちは、
世界最高峰の大会、**ミスター・オリンピア**を目指している。
大会1週間前。
それは「ピークウィーク」と呼ばれる。
ここで3〜6kg落ちることがある。

カーボディプリート
まず糖質を完全に断つ。
体は平坦になる。
筋肉は小さく見える。
しかし、これは計算通り。
グリコーゲンが枯れ、水が抜ける。
体重は落ちる。
だが、ここから逆転が始まる。
カーボアップ
大会2日前、糖質を一気に入れる。
するとどうなるか。
枯渇した筋肉がスポンジのように糖を吸い込む。
水も一緒に引き込む。
皮下の水は少ない。
筋肉内の水は多い。
結果、皮膚は薄く、筋肉はパンパンに張る。
これが「ステージコンディション」。
体重は数kg落ちているが、
筋肉は最大に見える。
ナトリウムと水の操作
塩を抜く。
水を増やす。
そして止める。
体は混乱し、余分な水を排出する。
ピークウィークは科学と経験の融合だ。
ほんの少しのミスで、舞台は台無しになる。
ボディビルダーが落としているのも、ほぼ水分。
脂肪はすでに何ヶ月も前から削り切っている。
この一週間は、
体を「彫刻」する時間。
数字ではなく、見た目を極限まで研ぎ澄ます。
超絶、断食生活を続けた男
断食382日 ― 医学史に残る減量記録
1965年、スコットランド。
体重約207kgの男性が病院を訪れた。
彼の名は
アンガス・バービエリ。
彼は医師の監督下で断食を開始する。
目標は体重減少。
だが、結果は予想を超えた。

最初の一週間
断食開始。
固形物は口にしない。
水、ビタミン、電解質のみ。
最初の数日で体重は急落。
1週間で10kg以上減ったと報告されている。
なぜか。
糖質が枯渇
水が抜ける
ナトリウムが減る
体は貯蔵物を手放す。
体はどう変わったか
人間は飢餓に適応する。
脂肪をエネルギーに変える。
ケトン体が主燃料になる。
彼は382日間で125kg減量。
最終体重は約82kg。
驚異的だが、これは医学管理下。
血液検査
電解質管理
医師の監視
普通の人が真似すれば危険だ。
一週間で落ちる体重の正体
急激に落ちる体重の多くは:
✔ 水分
✔ グリコーゲン
✔ 腸内内容物
脂肪はゆっくりしか減らない。
結論
人間は一週間で:
- 安全圏 → 0.5〜1kg
- 糖質制限初週 → 2〜4kg
- 水抜き → 5〜10kg
- 医学断食 → 10kg以上
しかし、その正体はほとんどが水。
体脂肪だけを落とすなら、
人間の生理学はもっと慎重だ。


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