面白いタイトルですよね。「インサイト」。なんとなく聞いたことある単語でしたが、意味は知りませんでした。
今回は運動でもなく、金融の話ではないのですが、人生を豊かにしていくための考え方というのでしょうか。気になったので紹介させていただきます。
インサイト=潜在的欲望
端的に言えば、人間の潜在的欲望、つまり「隠れた欲望」です。人間は意外と自らの欲望を具体的に言語化できない生き物です。
人間の欲望は氷山のようです。言語化できている、つまり顕在化した欲望は水面上の少しの部分でしかありません。大半は水面下にかくれた言語化できていない潜在的な欲望です。
インサイトの発見者は愛される!?
ヒトは当たり前のものに感謝しなくなる傾向にあります。最初は感謝するかもしれません。しかしそれが当たり前になると、次第に感謝はなくなってきます。むしろその「当たり前」がなくなると文句を言う人すらでてきます。勝手なものです。
いま世の中に存在する大半のものは「当たり前」に存在しています。スマホ、PC、Amazon、Netflix等々。なくなったら絶対文句言う人でてきます。
これらは「顕在化された欲望」なのです。
よくあるのが、旅行でホテルや旅館をで最高のサービス(接客)などとわれることがありますが、なにが基準で最高なのか、私はよくわかりません。ヒトによって最高の定義が違うからです。
接客業でよく使われる「最高のサービス」という言葉が使われますが、会社でお客様には抗しましょう、というマニュアルをこなすだけでは、当てはまる人には最高のサービス、となりますが、当てはまらないと「当たり前」で終わってしまうのです。
旅行で行くわけなので、おいしい料理、癒される温泉、などを提供されても、それを求めて予約しているので、これも顕在化された欲望なのです。
もっと簡単にいうと、ディズニーランドに行って、ミッキーに手を振られ、「最高のもてなし」と思う方はいないと思います。(もちろんうれしいかもしれませんが)潜在的な欲望を満たされているわけではありません。
バズる企画は潜在的な欲望を捉えている
マーケティングや広告やコンテンツの企画書には「インサイト」の文字が躍っています。人々はこんな欲望を持っているから、こんな商品を開発しましょうとか、こんな広告を打ったら刺さるはずですとか、このドラマはヒットするはずだとか、です。
こうやって文章にすると、ヒット商品を生み出すのは、潜在意識を刺激する商品をつくればいいのか、と思いますが、実際はそんな簡単にいかないのです。
Googleがインサイトを巧みに利用した
2004年、アメリカのGoogleはMITやスタンフォードなどを卒業したスーパーブレインズといわれる優秀な理系人材を求めていました。その採用促進をクリエイティブエージェンシーであるクリスピンポーター・アンド・ボガスキーに依頼しました。
普通のアドエージェンシーであれば、スーパーブレインズがどんなメディアを見るか調べて、そこに採用広告を出稿するわけですが、彼らはまったくちがうやり方でこのミッションを達成したのです。
名門理系大学の付近の看板に大きく奇妙なメッセージを掲げたのです。
日本語に訳すと「自然対数の底eの中から連続する10桁の素数」という意味だそうです。私は全くわかりませんでした。問題の解き方ではなく、問題を読み取れません(笑)
しかし、スーパーブレインズにとってこのメッセージはとてつもなく刺さるものでした。
彼らはどう反応すると思いますか?
そう、彼らは「この問題は俺が解く」と思うのです。メッセージの最後に.comという表記があるのでウェブサイトが存在することがわかります。彼らはこの超難問に挑戦したくなってこのウェブサイトを訪れるのです。
するとそこでもGoogleの表記はないまま、さらなる問題が提示され、正解を入力しつづけると、「あなたを採用します」というGoogleからのメッセージが表示されるのです。そう、これはGoogleの研究開発部門の採用試験そのものだったんですね。
Googleはこのキャンペーンで優秀なエンジニアを採用したそうですが、ここで重要なことは、「正解を出してグーグルから採用通知をもらった人でさえ、自分に『難問を解きたい』という欲望があることを自覚的に意識していない」ということです。多くのスーパーブレインズが、自分の欲望に気づかないまま、せっせと問題を解いて採用通知をもらっていたのです。
それくらい、人間は自分の欲望について無自覚なのです。人間は自分の欲望を言語化して意識することができないのです。
しかし、クリスピンポーター・アンド・ボガスキーの企画者は、「彼らはきっと自分の能力をひけらかすために、難問を解くにちがいない」とスーパーブレインズのインサイトを発見していたのです。
インサイトの見つけ方
人の欲望は、日々新たに生まれます。
誰とでも連絡が取れるようになったのは「電話」が誕生したからです。
どこでも連絡が取れるようになったのは「携帯電話」のおかげです。
言葉で連絡をとる手段しかもっていなかった携帯電話にカメラを付けて、映像をシェアできるようになったのが「カメラ付き携帯電話」です。
というような感じでどんどん人の欲望を具現化してきたのですが、それらが発明されるまでは誰も思いつかなかったわけなのです。(発明者は除く)
ではどのようにインサイトをみつけたらよいのでしょう。
違和感を探せ!
人間は不器用なので、自分の欲望をなかなか言語化できないと書きましたが、同じように、他人に説明できないまま自分の欲望を実現する行動に出てしまうことがあります。それが、自らのインサイトに敏感なファーストペンギンたちです。
「あ、あの人たち、今までの価値観だとちょっと説明できない行動をしているな」と違和感を覚えたら、それは新しい「あたりまえ」を実践する人たちの行動である可能性があるのです。
旅行や食事といえば、家族や友人、職場の同僚など複数で行くのがあたりまえだった時代に、「わたしは今、1人でご飯が食べたいの」と思って、1人で高級レストランに行った人は、きっとレストランのシェフに「1人で来客するなんてめずらしい客だなあ」という違和感を覚えさせたでしょう。
そして、そういった客が連続すると、「もしかすると、1人で来客したいと思っている人は最近増えているのかな?」と思うようになるわけで、それが「おひとりさま」というインサイトの発見へと至ります。
最近「ワン缶」といって、缶を片手に路上や公園で飲酒をする若者が多く見られるようになりました。今まで、なかった行動をしている人たちです。
あれ、以前にこの道で、お酒を飲んでる人なんて見たことなかったのに、昨日も今日も、お酒片手に飲んでいる人がいるなんて、ちょっと引っかかるな……。
というような違和感です。
彼らは居酒屋で飲むのを、お金がもったいないなと考えているんでしょうか? どちらかの家で宅飲みをするほどでもない関係なんでしょうか? ちょっとした隙間時間に、気軽にリラックスしたいんでしょうか?
新しい「当たり前」の最初の行動を発見する
このように日常生活で感じるちょっとした異変や、昨日までは考えられなかった人間の行動に覚える違和感の背後には、新しい「あたりまえ」を渇望するインサイトが潜んでいる可能性があるのです。
このような違和感をいち早く察知することが、新しいビジネスの扉をひらいていくのかな、と思いました。
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