カラダ作り、ダイエットをしている方は意識されているでしょう。タンパク質です。筋肉を作るために必要という認識は有名かと思います。しかし、そのタンパク質の摂取量が戦後と変わらなくなってきたそうです。タンパク質って意外と摂取できていない方多いと思います。朝はトースト、コーヒー。昼はおにぎり、パン、弁当。夜にご飯、みそ汁、主菜。という感じで夜にようやくタンパク質が少し摂取できるのかな、と思います。私も、現場で食事の指導をするときにタンパク質を「体重kg×1g」をお願いしておりますが、結構大変です。
例えば70kgの方なら70gタンパク質を摂っていただきます。鶏胸肉でいったら3枚くらいに匹敵する量です。食べてます、という方もいらっしゃると思いますが、この量を食べたことない方はぜひ挑戦してみてください。かなりお腹いっぱいになります。
このタンパク質が不足していると痩せにくくなります。食べてないのに痩せない方、必見です。
日本人のタンパク質摂取量は戦後レベル
「たんぱく質、ちゃんと摂っていますか?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?
「肉も魚も食べてるから大丈夫」「お肉大好き! むしろ食べすぎてるんじゃないかと心配になる」そう答える人が多いようです。しかし、実際にたんぱく質が十分摂れている人は、とても少ないのです。
厚生労働省が行っている国民健康・栄養調査などの結果から、1日あたりのたんぱく質摂取量の平均値の推移(図表1)を見てみると、戦後から上昇を続け、1995年にピークを迎えました。
そのときのたんぱく質摂取量の平均値は約80g。2000年ごろまで80g前後で推移しましたが、その後急激に減少し、2019年には約70gとなっています。
たんぱく質の摂取量が約70gとは、1950~1960年代と同程度です。戦後間もないころと同じくらいとは驚きますよね。
生活習慣病の予防には「目標量」が必要
厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」には次のように定義されています。
推奨量→母集団に属するほとんどの者(97~98%)が充足している量
目標量→生活習慣病の発症予防を目的として(中略)現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量
つまり、推奨量を満たしているのは当たり前であり、本来は目標量を目指して摂取するようにしなければいけません。
健康意識が高い人でも8割が不足している
では、私たちはたんぱく質の目標量を摂れているのでしょうか? 答えはNO!
たんぱく質の推奨量は、男性は20~65歳が65g、65歳以上が60g、女性は20歳以上が50gなので、推奨量こそクリアしていますが、目標量に対しては多くの世代でたんぱく質不足になっています。
もちろん、これは摂取量の話。「食事で摂り入れたたんぱく質がちゃんと吸収されているのか?」というのはまた別の話です。
クリニックによりますが、自費診療でタンパク質が正しく吸収されているかを測定できるそうです。あるクリニックでは8割近くの方がタンパク質不足の結果がでたそうです。
つまり、“摂っているつもりが摂れていない”。それが、多くの人がまだ気づいていないたんぱく質の現実なのです。
三大栄養素の中でも「一番大切」
「たんぱく質は筋肉づくりやダイエットのために必要。でも、それ以上のことはよく知らない」という人が多いのではないでしょうか。
たんぱく質は英語でプロテイン。ギリシャ語の「最も大切」「第一の」という意味の言葉が語源とされています。医学も栄養学も発展していない時代から、人間は体験的にタンパク質の大切さを感じていたのでしょう。私たちも「糖質、脂質、たんぱく質の三大栄養素のうち、一番大切なのは?」と聞かれたら、迷うことなく「たんぱく質」と答えます。
タンパク質が一番大切な理由を、ぜひ知っておいてください。なぜなら、「知らずに食べるか、知って食べるか」の違いはとても大きいからです。知ることで納得できる→自主的に実践できる→自分に合う方法を考えられる→継続できる→体の変化を実感できる、という好循環が生まれるはずです。
タンパク質が必須である5の理由
①たんぱく質は、全身の細胞の材料
→不足すると、体の材料が足りなくなる
諸説ありますが、1人の体を構成する細胞は約60兆個あり、これは、世界の人口(約81億人)の約7400倍もの数になります。そして、筋肉、内臓、骨、肌、髪、血液などは、すべてこれらの細胞が集まってできています。
細胞はたんぱく質を材料につくられているのだから、たんぱく質は細胞レベルで重要! 体を構成する成分のうち、水分を除くと残りの半分弱はたんぱく質でできています。そのため、たんぱく質が不足すると体は材料不足となり、肌や髪が荒れたり、内臓の働きが悪くなったり、骨がもろくなったり、貧血になったりして、あちこちに不調が表れるわけです。
臓器や血液、骨は生まれ変わっている
②たんぱく質は、常にターンオーバーを繰り返している
→不足すると、細胞が老化する
体を構成する約60兆個の細胞は、たんぱく質を材料に、絶えず合成と分解を繰り返してつくり替えられています。それがターンオーバー(細胞の生まれ変わり)です。
ターンオーバーの周期は臓器や組織によって異なり、胃・小腸の粘膜は約3日、大腸の粘膜は約10日、皮膚・肝臓・腎臓は約1カ月、筋肉は約2カ月、血液は約4カ月、骨は約5カ月で新しい細胞に生まれ変わっています。
つまり、「今の自分は半年前の自分ではない」のです。しかし、これはあくまでたんぱく質を十分に摂っている場合。たんぱく質不足が続くと、細胞のターンオーバーの周期が乱れ、細胞は老化。体の機能低下や不調の原因になります。逆に考えると、十分なたんぱく質摂取によって「半年後の体を若々しく作り替えることができる」といえます。
③たんぱく質は、ホルモン、酵素、抗体などの分泌物質の材料になる
→不足すると、体の機能が低下する
ホルモン(神経伝達物質)、消化吸収を促す酵素、免疫機能を支える抗体など、さまざまな分泌物はたんぱく質を材料につくられています。たんぱく質不足が続くと、消化吸収力の低下、代謝の低下、神経伝達機能の低下、免疫力の低下など、体のさまざまな機能が低下し、不調が起こりやすくなります。
イライラする原因はセロトニン不足
④たんぱく質は、心の健康にも欠かせない
→不足すると、“幸せホルモン”が不足する
やる気が出ない、気分が落ち込む、イライラする……そんな心の不調の原因のひとつと考えられるのがセロトニンという脳内の神経伝達物質の不足です。セロトニンは、“幸せホルモン”とも呼ばれ、心身をリラックスさせたり、意欲を増したりする働きがあります。
セロトニン不足は、自律神経や体内リズムの乱れなどによって起こりますが、そもそも、セロトニンの材料となるたんぱく質が不足していると産生量が低下し、意欲が低下したりイライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。
また、セロトニン不足になると、セロトニンを材料につくられる睡眠ホルモンのメラトニンの産生量も減り、睡眠のリズムが崩れてしまいます。
ほかにも、たんぱく質不足によって、元気ホルモンであるドーパミン、リラックスホルモンであるGABAなどの神経伝達物質も不足して、精神の不安定な状態につながります。
⑤たんぱく質は、消化吸収時に約30%が熱エネルギーになる
→不足すると、冷えやすく、太りやすくなる
たんぱく質は、20種類のアミノ酸が50個以上集まり、さまざまな配列で複雑に結合してできています。食事で摂ったたんぱく質は、体内の消化酵素(これもたんぱく質からできている!)によって分解され、1個のアミノ酸や、アミノ酸が2~3個結合したペプチドという状態になり、小腸から吸収されます。
このようにして複雑に結合したたんぱく質が体内で分解され、吸収されるとき、その約30%が熱エネルギーになるのです。これを「食事誘発性熱産生」といいます。この熱産生量は午後や夜間よりも午前のほうが高いため、朝食を抜くと熱産生量が下がって、代謝が悪い体質になってしまいます。
つまり、たんぱく質を摂取することで熱が生まれて体温が上昇。逆に、たんぱく質が不足していると、体温が上がらず冷えやすくなり、さらに代謝が低下して太りやすくなります。
まとめ
カラダ作りにタンパク質は欠かせませんが、これほどタンパク質が重要だと思い知らされました。日々の食事でタンパク質は意図して摂取しなしと不足してしまいます。
戦後と同等レベルのタンパク質摂取量というのも、飽食の時代でタンパク質だけでなく、ジャンクフードなどでお腹を満たしてしまっていないでしょうか。別記事でも記載した「朝食で控えるべき食材/老化を促進させる超加工食品 腸内環境に警鐘」で加工食品がどれだけカラダに悪いかを述べました。
便利な世の中になりましたが、エンプティカロリーといわれる栄養のないカロリーも増えました。絶対食べてはいけないとはいいませんが、今回を機にお腹が空いたらタンパク質を意識して摂ってみてください。
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