いつかは独立して会社を経営しようとお考えの方、いらっしゃると思います。そのためには何を勉強したらよいのでしょうか。

それは簿記です。簿記とは入ってくるお金と出ていくお金を把握する内容を精査する力です。資格でいうと、
1. 日商簿記(日本商工会議所主催)
- 1級:最難関で、公認会計士や税理士を目指す人向け。工業簿記・会計学も含む。
- 2級:企業の財務管理や経理職に役立つレベル。商業簿記・工業簿記を学ぶ。
- 3級:基本的な経理・会計の知識を学ぶ入門レベル。商業簿記が中心。
- 4級:初歩的な簿記知識を学ぶ。現在は受験者が少なくなっている。
2. 全商簿記(全国商業高等学校協会主催)
- 商業高校生向けの資格で、1級~3級まである。
- 日商簿記よりもやや易しく、高校生が経理の基礎を学ぶのに適している。
3. 全経簿記(全国経理教育協会主催)
- 上級:日商簿記1級と同等のレベルで、税理士試験の受験資格になる。
- 1~3級:日商簿記と似たレベル感だが、出題範囲が異なる。
どの資格を選ぶべき?
- 経理・会計職を目指すなら日商簿記2級以上
- 商業高校生なら全商簿記
- 税理士・会計士を目指すなら日商簿記1級や全経上級
こんな感じです。いっぱいありますね。どれも役に立つ内容ですが、一般的に「日商簿記3級」から入る方が多い印象あります。
簿記が「腸」なら決算書は「うんこ」?
簿記を学んだうえでさらに財務について学ぶと、会社のお金を増やすためには何をする必要があるのか、いまお金が減っているのであれば、それがなぜなのかなどがわかるようになります。
決算書の数字を見ても、よくわからないのは、簿記のルールやしくみをわかっていないからです。
決算書が最終アウトプットだとしたら、複式簿記はそのプロセス。人間の体に例えるなら、簿記は「腸」。決算書は「うんこ」です。決算書が「下痢ピー」なとき、簿記の段階から正すのが根本治療。地味だけど、超大事。それが「簿記」なのです。

簿記と聞くと、「むずかしそう」「とっつきにくい」「学ぶのが面倒」などと思われるかもしれません。
しかし、簿記を勉強している方が聞くと怒るかもしれませんが、はっきりいって簿記は一度コツをつかんでしまえば、非常に簡単な学問です。簿記で使われる勘定科目とその属性を知り、会社が行った取引から仕訳というものがイメージできれば、経営者の知識としては、合格ラインです。
会社では、日々発生する取引のうち、後述する「属性」の数字が動くものを、仕訳という形で記録していきます。

その際に使うのが「勘定科目」といわれるもので、「現金」「借入金」「仕入」「売上」などのように、名前を見ればその意味がなんとなくイメージできるものが多いです。
そして、それぞれの勘定科目は、①資産、②負債、③純資産、④収益、⑤費用という「5つの属性」のいずれかに分類されます。
決算書の構造と仕訳の属性は同じ
どの勘定科目がどの属性に当てはまるかがわかれば、取引を仕訳に落とし込むことができます。
実は、これらの属性は、貸借対照表や損益計算書に記載されている区分と同じなのです。
貸借対照表には、資産、負債、純資産という3つの区分があり、損益計算書には収益と費用という2つの区分があります。
仕訳で使う「5つの属性」のうち、①資産、②負債、③純資産の属性に該当する勘定科目は貸借対照表へ、④収益、⑤費用に該当する勘定科目は損益計算書へと集計されることになります。

出典=『頭がいい社長は“会社のお金”のココしか見ない 90日で手残りを増やす「武器としての簿記」』(KADOKAWA)
損益計算書にある科目の仕訳ルールはこれ
損益計算書は、1年間の業績をあらわす決算書です。
よく見かける損益計算書は、縦方向に数字が並んだものになっています(専門的には報告式といわれる形式です)。
しかし、左側は費用、右側は収益であらわされる損益計算書もあります(勘定式といいます)。簿記を学ぶときは、この左右に分かれた決算書のほうがわかりやすいので、図表2で勘定科目、属性と損益計算書の関係を見ておきましょう。仕訳では、「費用」の属性をもつ勘定科目が増えたら左、「収益」の属性をもつ勘定科目が増えたら右となります。

出典=『頭がいい社長は“会社のお金”のココしか見ない 90日で手残りを増やす「武器としての簿記」』(KADOKAWA)
積み上がる貸借対照表、リセットされる損益計算書
簿記は取引を仕訳して集計しているだけです。取引ごとに仕訳を作成し、1年分の仕訳をすべて集計すると、貸借対照表と損益計算書が完成します。
貸借対照表は、ある時点の財政状態をあらわし、会社を設立してからのすべての資産、負債の増減が蓄積されていくものです。
一方、損益計算書は、1年間の業績をあらわしているので、毎期決算が行われるたびにリセットされます。
したがって、期首の貸借対照表には前期の決算額を引き継いだ金額が入っているのに対して、損益計算書の収益と費用は0からスタートします。
期末の貸借対照表は、前期から引き継いだ期首の残高に、期中の資産や負債の動きを加減算し、損益計算書に集計される収益と費用の差額である損益を純資産の部(の利益剰余金)にプラスすることで完成します。
その意味では、期首の貸借対照表と期末の貸借対照表を埋めるのが損益計算書の役割であり、損益計算書は貸借対照表をつくるためにあるといっても過言ではないでしょう。
簿記を学べば数字に強くなれる

決算書は、実務的には会計システムが自動で集計して作成するので、経営者が直接手作業で集計するわけではありません。しかし、簿記のしくみを理解しておくと貸借対照表や損益計算書の理解が深まります。
先ほどふれたように、損益計算書が完成すると、発生した損益が貸借対照表に加算されて、貸借対照表が完成します。
たとえば、1年間に発生した収益が1,000万円、費用が400万円であれば、差額の600万円が利益です。このとき、同時に、貸借対照表の純資産も600万円増えます。
純資産の増加は仕訳でいうと、右側に記載されます。右側と左側の金額は一致するので、その分資産も増加して、貸借対照表のサイズが大きくなっていきます。
逆に、赤字の場合は、本来、右側にある純資産が、マイナスとして左側に仕訳されてしまいます。たとえば、収益が300万円、費用が1,000万円のときは、700万円の赤字となり、純資産が700万円減少します。その分資産も700万円減少するので、貸借対照表のサイズは小さくなります。
ここまでで、簿記の基本的な構造は理解できたと思います。
すべての仕訳を覚える必要はありませんが、ある程度簡単な仕訳はイメージできるようにしておきましょう。
簿記の構造を理解すれば、決算書の数字が理解しやすくなるのは間違いありません。意欲のある経営者の方は、いまからでもよいので簿記3級・2級を学んでいただきたいと思います。

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