※週55時間以上の労働時間でリスクが1.21倍に…
脳卒中は高齢者だけの病気ではございません。日本では約4.3人に1人が脳卒中を発症するとされています。働く世代の推計患者数は約16%にのぼるそうです。

約4.3人に1人が発症するとされる
脳卒中は、脳の血管に異常が生じ、脳の一部に血液が届かなくなったり、出血したりすることで起こる病気の総称です。現代社会において、脳卒中は多くの人々にとって重大な健康リスクとなっています。日本では、約4.3人に1人が一生のうちに脳卒中を発症するとされています。

脳卒中は個人の健康だけでなく、企業や社会にも大きな影響を及ぼします。医療費やリハビリ費用といった直接的なコストに加え、休職や労働力の喪失による生産性の低下といった間接的な損失も発生します。
一般的に心筋梗塞などの心疾患発症後の復職率は約80%、脳卒中後の復職率は約50%といわれており、脳卒中後の復職率が低いことが分かります。特に働く世代においては、脳卒中による休職や復職困難が、キャリアや生活に深刻な影響を及ぼします。
40歳を過ぎると発症が増える傾向
脳卒中は高齢者に多い病気というイメージがありますが、実際には働く世代の「推計患者数」は全体の16%を占めており、特に40歳を過ぎると発症が急増する傾向にあります。
脳卒中を含む脳血管疾患で治療や経過観察のために通院している患者数は、日本国内で推計174万人に上り、そのうち約17%(29.5万人)が働く世代であることが報告されています。
また、一度発症すると1年以内の再発率は約5%、累積再発率は5年で35.3%、10年で約51.3%に達すると言われており、再発防止も重要な課題です。診断別にみると、くも膜下出血、脳出血、脳梗塞の10年再発率はそれぞれ70.0%、55.6%、49.7%で、くも膜下出血の再発リスクは特に高くなっています。
長時間労働は脳卒中のリスクを高める
最近の研究によると、働く世代の脳卒中では、「低い身体活動」と「高血圧」は最も重要なリスク因子であり、それぞれ全脳卒中の59.7%、27.1%を占めていた、という報告もあります。同研究において、高血圧、脂質異常症、糖尿病、冠動脈疾患、喫煙、過度の飲酒、低身体活動、肥満の8つのリスク因子を全て合わせると、全脳卒中の78.9%を説明できる、ということも示されました。他にも、高血圧の人は脳卒中リスクが約2倍、糖尿病の人は約2~3倍になるとも言われています。
長時間労働も脳卒中のリスクを高めることが明らかになっています。ある研究では、労働時間が55時間/週以上の場合、対照群の30~45時間/週と比較して、脳血管疾患のリスクが1.21倍になることが報告されました。
「脳血管が破れるタイプ」と「脳血管が詰まるタイプ」
脳卒中は大きく2種類に分類されます。
1.脳血管が破れるタイプ(出血性脳卒中)
・脳出血:脳内の細い血管が破れて出血
・くも膜下出血:脳動脈瘤が破裂し、脳の表面に出血
2.脳血管が詰まるタイプ(虚血性脳卒中)
・脳梗塞:動脈硬化などにより血管が詰まり、血流が遮断される
脳卒中は、発症する部位によって症状が異なりますが、共通して以下のような症状が突然現れるのが特徴です。
・運動障害:片側の手足や顔が急に動かなくなる、またはしびれる。
・言語障害:言葉がうまく出せなくなる、他人の言葉が理解できなくなる。
・視覚障害:片目が見えなくなる、物が二重に見える、視野の一部が欠ける。
・その他の症状:未経験の激しい頭痛、平衡感覚の異常により立つ・歩く動作が困難になる
・重症の場合:意識がもうろうとする、または失うことがある。
一刻も早い医療機関での治療が重要
脳卒中が疑われる場合は、ただちに119番に通報し、救急車を呼びましょう。脳卒中は発症後の時間経過とともに脳へのダメージが進行するため、一刻も早い医療機関での治療が必要です。
救急車が到着するまでの間、周囲の人が適切に対応することで、重症化を防ぎ、治療の効果を高めることができます。以下の対応を落ち着いて行いましょう。
1.安全な体勢を保つ

本人を横向きに寝かせ、頭を少し高く保ちます。無理に動かすと症状が悪化する可能性があるため、慎重に対応しましょう。
2.意識や呼吸の確認

声をかけても反応がない場合は、呼吸や脈拍を確認します。もし呼吸が止まっている、または脈拍が確認できない場合は、すぐに心肺蘇生法(CPR)を開始してください。
3.救急隊への情報提供の準備

発症した時間や具体的な状況、症状、本人の既往歴(高血圧や糖尿病の有無など)を記録し、救急隊員や医療スタッフに伝えられるよう準備しておきましょう。
リハビリの継続は回復に大きく影響する
脳卒中の後遺症は、発症した部位や範囲、年齢、健康状態、治療の開始時期によって異なります。一般的に軽症・中等度・重症に分類されます。
軽症:日常生活への影響は少なく、適切なリハビリによって回復が期待できる状態です。
・軽度の麻痺や感覚障害(手足のしびれ、軽い動作のぎこちなさ)
・記憶力・集中力の低下(物忘れが増える、長時間の作業が困難)

中等度:日常生活に支障をきたすが、リハビリによる改善が期待できる状態です。
・半身麻痺(片側の手足が不自由だが、自立歩行が可能な場合もある)
・言語障害(話しづらい、言葉の理解が困難)
・嚥下障害(食べ物を飲み込みにくい、誤嚥のリスクあり)

重症:日常生活が困難となり、介助が必要な状態です。
・重度の半身麻痺(片側の手足がほぼ動かない)
・感覚障害の進行(痛みや温度を感じにくくなる)
・高度な言語障害(意思疎通が極めて困難)
・深刻な嚥下障害(経管栄養が必要になることも)

最重症(高度な介護が必要):完全な寝たきり状態となり、常に医療や介護の支援が必要になります。

脳卒中の後遺症は、早期の適切な治療とリハビリによって改善の可能性があります。特に、発症後の急性期治療を迅速に行うことで、後遺症の重篤化を防ぐことができます。
また、リハビリの継続は回復に大きく影響します。理学療法(運動機能の回復)、作業療法(日常生活動作の回復)、言語療法(会話や嚥下機能の改善)などを適切に行うことで、機能回復の可能性を最大限に引き出すことができます。
デスクワークなら「こまめな立ち上がり動作」を意識
脳卒中の発症リスクを減らすためには、以下の予防策が有効です。
1.定期健康診断を受ける
・高血圧や糖尿病などのリスク因子の早期発見・治療が重要
2.適切な生活習慣を維持する
・食事:塩分・脂肪を控え、野菜・果物を多く摂る
・禁煙・飲酒は適量
・歩行:歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上(1日約8000歩が目安)
・運動:息が弾み汗をかく程度以上の運動を週60分以上
・こまめな立ち上がり動作:座りっぱなしの時間が長くならないように注意。デスクワークの場合、30分に1回立って少しでも動く
3.長時間労働を避け、睡眠を確保する
・長時間労働は脳卒中のリスクを増加させるため、適切な休息を確保する
・毎日6~8時間の睡眠を確保する

脳卒中は高齢者だけでなく、働く世代にとっても深刻なリスクとなります。一度発症すると再発率が高く、仕事や日常生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
今日からできることから始めて、脳卒中のリスクを最小限に抑え、健康で充実した生活を送りましょう。
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