筋トレとプロテインブーム
筋トレブームが続く昨今、テレビではさまざまな筋肉タレントが活躍し、SNSでは筋肉自慢の男女が筋肉美やトレーニング風景を発信しています。プロテイン関連商品の種類も増えて、プロテインドリンク、プロテインヨーグルト、プロテインブレッドなどの食品が手軽に購入できるようになりました。
とはいえ、筋肉はアスリートや肉体美を競う人にだけ必要なものではありません。いつまでも若々しく、病気をせず、思い通りに体を動かして生活するために、欠かせない組織です。
そこで今回は筋肉、筋力トレーニングの必要性と、その効果を最大限に引き出す食事、特にプロテインの摂り方についてお伝えします。

先ほど筋トレは万人にとって必要なものだと言いましたが、なぜなのか簡単にご説明いたしましょう。
加齢で年0.5~1.0%ずつ減る筋肉
まず、筋肉は体を動かすエンジン、つまり「運動装置」であり、平衡性(バランス)、敏捷性などとも深く関わる重要な組織です。
筋肉は20歳頃をピークに年に0.5~1.0%ずつ減っていくので、放っておけば確実に体力が低下し、階段昇降や家事などの動作で疲れを感じやすくなります。揺れる電車内で安定して立つことが難しくなったり、平地や坂道での歩行の速度が落ちたりと、日常生活で不具合が生じます。
筋肉はまた、寝ている間も脂肪や糖を燃焼して、体温を生み出す「発熱装置」でもあります。
加齢に伴って筋肉が減ると体が省エネモードになり、食事量が変わらなくても脂肪や糖が蓄積していきます。その結果、筋肉が減って体脂肪が増えて体型が崩れるだけでなく、高脂血症や高血糖を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病を発症するリスクが高まります。
加齢に伴う筋肉の減少を食い止め、失ったぶんを取り戻して若返るためには、筋力トレで筋肉を刺激し、筋肥大を促すことが欠かせません。
ですが、いくら筋トレをしても、それだけで筋肉を増やすことはできません。
筋トレで筋肉が強い刺激を受けると、そこに小さな損傷と炎症が起こりますが、その回復過程で筋肉の原材料となるアミノ酸が必要になるからです。

アミノ酸の大もとはタンパク質、英語でいえばプロテインですから、プロテインも筋肉の維持・回復に不可欠なのです。
私たちの体にある細胞を構成する要素で最も多いのは水、次がタンパク質です。ただ、私たち人間を含めた動物は、体内でタンパク質を合成できないので、外から食事として取り込むしかありません。
タンパク質は植物よりも動物のほうが圧倒的に多く含まれますが、植物でも豆類は例外的にタンパク質が多い食品です。大豆や大豆製品の単位重量当たりのタンパク質の含有量は、なんと肉や魚以上です。
1日どれくらいのタンパク質が必要か
筋肉を増やすためには、体重1kgあたり少なくとも1.5g、できれば2g必要で、体重70kgの人なら105~140gが1日の必要量となります。
参考までに、卵のタンパク質は12g(100gあたり、以下同)、とり胸肉は12.5g、納豆は16.5gです。卵はMサイズ1個が約60gなので、140gのタンパク質を摂るなら約20個、納豆は1パック50gなので、約15パック以上に相当します。
ここで注意が必要なのは、人間はたくさんの量のタンパク質を一度に消化吸収できないことです。個人差はありますが、40~50gが上限といわれています。また、筋肉が主に成長するのは夜間ですが、日中でもゆるやかに成長するため、つねにタンパク質が供給されなければなりません。
このため、一度に大量に摂っても意味がなく、朝、昼、晩の3食とも、1皿ぶん(手のひら1つぶん)の肉か魚、大豆(大豆製品)の主菜を摂る必要があります。
それと同時に大事なのは、筋肉を減らさない工夫です。
空腹になって血糖値が下がると、糖の代わりに筋肉が使われてしまいます。朝、昼、晩としっかり3食摂った場合でも、昼食と夕食の間は6~7時間、あるいはそれ以上空くため血糖値が下がります。これを防ぐには、午後4時前後にタンパク質を含む間食を摂る必要があります。
プロテインのメリット
先ほど、毎食しっかり主菜を摂るようにお伝えしましたが、守れない方も多いと思います。慌ただしくて朝食を抜いてしまったり、昼食で入ったお店のメニューがどれも主菜が十分でなかったり……。そんなときに便利なのが、プロテインです。
プロテインの1つめのメリットは、手軽さです。水や牛乳に溶かして飲むだけで、20~30gのタンパク質を摂取できます。
2つめのメリットは、脂質が少ないこと。肉や魚、大豆はタンパク質とともに脂質も多く含みますが、プロテインには脂質が含まれないか、含まれていても少量です。
そして、3つめのメリットはビタミン、ミネラルが多く含まれていることです。
朝は忙しいからパンとコーヒーだけという方は、コーヒーをプロテインに変えるだけでタンパク質の摂取量が増えるだけでなく、栄養バランスが整います。昼食の主菜が少なければ、職場や家に戻ったあとでプロテインを飲めば、タンパク質を補うことができます。
プロテインの種類と特徴
ちなみに、プロテインには牛乳から作られる「ホエイプロテイン」と「カゼインプロテイン」、大豆から作られる「ソイプロテイン」があります。
ホエイプロテインは消化吸収が速いので増量したい人向き、カゼインプロテインは腹持ちがいいので、筋肉をつけながら体脂肪を減らしたい人に向いています。牛乳に含まれる乳糖でお腹がゆるくなる人には、ソイプロテインがおすすめです。
ホエイプロテインから脂質や糖を取り除き、高タンパクに仕上げたホエイプロテインアイソレート(WPI)は、より早く体型を改善したい方、乳糖が合わない方におすすめです。

プロテイン食品を活用しよう
ひと昔前はプロテインといえばバニラ味ばかりでしたが、現在はチョコレート味、ストロベリー味、抹茶味など、フレーバーのバリエーションが豊富になりました。
食欲は、生物としての最も基本的な欲求の1つであり、香りや味などを感じながら食べることで心が満たされ、ストレスを和らげてくれます。自分の好きなフレーバーを選べるようになったのは、心身双方の健康にとってよいことでしょう。
一方、食欲を満たすという意味でデメリットがあるとしたら、かみ応えを味わえないところでしょうか。そういう意味では食としては不完全です。
ただ、最近はパウダー以外に、バー(スティック)やヨーグルト、ソーセージ、パン、パスタなど、さまざまなタイプのプロテイン食品が登場しています。味が整っているものも多く、これらはパウダーの不完全さを補ってくれます。


これらを最も血糖値が下がる夕方に間食(補食)として摂ると、血糖値の低下による筋肉の分解を防げるとともに、血液を介して筋肉にアミノ酸を供給してくれるので、筋肉を効率よく増やすのに役立ちます。
ヨーグルトはデザートにもなりますし、パンやパスタなどを通常の主食と置き換えると、1食あたりのタンパク質摂取量を増やすことができます。
運動時のプロテインの摂り方
では、「運動の直前・直後にプロテインを摂ったほうがいいか」という点ですが、特にプロテインを摂る必要はありません。
運動中は内臓の血液が減って筋肉の血流量が増加するため、運動の直前に摂ってしまうと消化吸収ができず、胃がもたれて運動に支障が出ることもあります。
運動後も30分程度は筋肉に血液が集まっていますから、運動直後に摂ってもうまく消化や吸収ができません。

一般的なビジネスマンがトレーニングを開始しやすい時間は、終業後の午後7時ごろでしょう。午後4時ごろに補食としてプロテイン食品を摂っていれば問題はありませんが、空腹を感じるようなら、運動の30分前に200ml程度の果汁かスポーツドリンクを摂りましょう。
運動後は少なくとも30分、できれば1時間空けてから、主菜の充実した夕食を摂れば、就寝中にアミノ酸が筋肉に供給され、筋肉の生成が促されます。
ここまでタンパク質の重要性とプロテイン食品の利用法をお話ししました。
プロテインはドーピングではないですから、筋トレをしなければ筋肉をつける効果はなく、かえって摂取エネルギー量を底上げして体脂肪が増えてしまう可能性があります。
また、必要以上にタンパク質を摂りすぎると、余分なタンパク質を体外に排出させるために腎臓に負担がかかりますので、食べすぎにも注意しましょう(腎臓を患っている人は、必ず主治医に相談してください)。

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