近年、肝臓の健康に注目が集まっています。医学が進歩して、肝臓こそ健康長寿を実現するカギになる臓器だということが分かってきたのです。
たとえば、「脂肪肝」は、これまで「誰でもかかるたいしたことない病気」のように扱われてきましたが、じつは「動脈硬化や糖尿病などを招く重大な病気」であることが判明しています。脂肪肝を甘く見て放っておいていたら、老化や病気が加速して、先々の人生を大きく狂わせることにもなりかねません。
ただ、肝臓は、ポイントを押さえたケアを行えば復活する臓器です。肥満やアルコールなどの問題で長年健診の肝機能の数値が悪かった人も、やるべきことをやりさえすれば短期間で回復させることができます。
では、どんなケアを行えばいいのか?
以下では、「どんな人が脂肪肝になりやすいのか」について解説します。
日本人の3人に1人が脂肪肝
脂肪肝は肝臓の肝細胞に中性脂肪がたまりすぎて発生する病気です。現在、日本人の3人に1人、推定4000万人が脂肪肝だとされています。
ただ、この数字はエコー検査などでちゃんと確定診断を受けた人の数をもとにしているので、脂肪肝の疑いがあっても放置していたり、ろくに健康診断を受けていなかったりする人を合わせたら、到底4000万人どころでは済まないでしょう。たぶん、日本人の過半数が脂肪肝になっていると言ってもいいのではないでしょうか。
それにしても、いったいなぜ、こんなに多くの人が脂肪肝になっているのでしょう。「なりやすい人」にはどんな特徴や傾向があるのでしょうか。
まず、とても多くの方が思い込んでいる間違いを指摘しておきましょう。それは「脂肪肝は脂肪の摂りすぎで起こる」というものです。
「脂肪肝っていう名前がついてるから、脂肪の摂りすぎが原因なんだろう。だから、脂っこい肉料理とか揚げ物とか天ぷらとかの脂肪の多いものを控えればいいんじゃないか」というわけですね。


でも、これは大きな誤解。脂肪肝の形成に「脂肪の摂りすぎ」はほとんど関係ありません。口から入る脂肪の量は気にしなくてOK。脂肪肝の人や脂肪肝が心配な人も、肉や揚げ物などの脂っこいものを控える必要はまったくありません。
「主食以外の糖質の量」が増えている
では、いったい何が脂肪肝の原因なのか。その最大の原因は「糖質の摂りすぎ」です。
みなさんご存じのように、糖質が多いのは、ごはん、パン、麺類などの主食です。それに、現代では、果物、甘い飲み物、スナック菓子、調味料などによって入ってくる糖質の量がたいへん増えています。つまり、主食だけでなく、主食以外の部分で無意識に摂ってしまっている糖質量がかなり多く、いまの時代は誰もが「糖質過剰」に陥りかねない状況になっているのです。





糖質は、体内に入るとまずブドウ糖に分解されます。血中のブドウ糖は全身を巡り、インスリンの働きにより細胞のエネルギーとして利用されます。また、エネルギーとして利用されずに余ったブドウ糖は、肝臓においてグリコーゲンに合成されて肝臓内や筋肉内に貯蔵されます。ただ、このグリコーゲンの貯蔵庫は一時しのぎ用であり、そうたくさんの量はためられません。
それでは、どっとたくさんの糖質が入ってきて、グリコーゲンの貯蔵庫がすでに満杯のとき、血中に余った糖質はどうなるのでしょう。すなわち、それらの余剰ブドウ糖が、肝臓において中性脂肪に変換されているのです。
ですから、日々大量の糖質が入ってきて、常にブドウ糖があり余っているような状況だと、それらのブドウ糖がどんどん中性脂肪に変換されて、肝臓、内臓周り(内臓脂肪)、皮下(皮下脂肪)などに蓄積されていくことに……。このため、普段から糖質を摂りすぎていると、体各部にじわじわと脂肪が蓄積して、てきめんに肥満や脂肪肝が進んでしまうことになるわけです。
なお、「余剰ブドウ糖→中性脂肪」の変換において、指令役のような役割を果たしているのがインスリンです。
インスリンは「血糖値を下げるホルモン」として広く知られていますが、じつは「余剰ブドウ糖の中性脂肪変換を促進する」という「もうひとつの顔」を持っています。つまり、普段から糖質をたくさん摂ってしょっちゅう高血糖状態になっていると、その都度インスリンが出て「余っているブドウ糖を中性脂肪に変えろ」という指令をひっきりなしに発しているのです。
ですから、インスリンが出れば出るほど肥満や脂肪肝が進んでしまうと言ってよく、このためインスリンは「肥満ホルモン」「脂肪化ホルモン」などといった呼ばれ方をする場合もあります。
普通の食事をしていても糖質過剰摂取に
要するに、「糖質の過剰摂取」→「慢性的高血糖」→「インスリンの大量分泌」→「ブドウ糖の中性脂肪変換が進む」→「肝臓などへ脂肪が蓄積」という流れができてしまうのがいけないわけです。
そこで考えてみてください。みなさんは、普段の生活で知らず知らずのうちにかなりの量の糖質を口にしてはいないでしょうか。
- ごはんを食べた後に「別腹」と言って甘いものや果物を食べてはいないでしょうか。
- のどが渇いたときに甘いジュースやスポーツドリンクを飲んではいないでしょうか。
- 回転寿司で山のようにお皿を積み上げてはいないでしょうか。
- アメやグミをしょっちゅう口に放り込んではいないでしょうか。
- スナック菓子を食べ続けて一袋空けてしまうことはないでしょうか。
- 焼き肉のたれやドレッシングなどの糖分の多い調味料を頻繁に使ってはいないでしょうか。






きっと、普段の食生活を振り返ってみて、「自分もかなり糖質過剰になっているかも……」と思った方はかなり多いはずです。
先にも述べたように、現代では主食以外の部分で無意識に摂っている糖質量が多く、誰もが糖質の摂りすぎになるリスクがあります。
おそらく、「自分の食事は健康的だと思っている」という人でも、気づかないうちに糖質の過剰摂取になっているかもしれません。
いまの日本では、別に食べすぎもせず、ぜいたくもせず、ごく庶民的な普通の食生活をしていたとしても糖質の摂りすぎで脂肪肝になってしまうケースが少なくないのです。
「糖質過剰で脂肪肝になるリスクは誰にでもある」なんて言われると、「自分は大丈夫だろうか」と心配になってくる方も多いと思います。
脂肪肝チェックテスト
※以下の項目で当てはまるものを☑してください。3つ以上当てはまった人は脂肪肝の可能性大です。
□最近、おなかが出てきた
□食事にかける時間が10分以内のことがよくある
□ごはんを2膳以上食べる日が週に5日以上ある
□麺類を週に3回以上食べる
□ほぼ毎日、フルーツを食べる
□ほぼ毎日、甘い飲み物を飲む
□毎日たくさんお酒を飲む
□食事は主食から食べる
□歯の手入れがおろそかになっている
□口の中が乾いていると感じることがある
□習慣にしている運動がない(運動の習慣がない)
□筋肉が衰えたと感じる
□夜、寝つきが悪いことがある
□朝起きたとき、疲れが取れてないと感じることがある
□たばこを吸う
□収縮期血圧(上の血圧)が130mmHg以上ある
おわりに…
いかがでしょう。脂肪肝のリスクは誰にでもあるのです。決して脅かすわけではないのですが、みなさんもすでに脂肪肝になっていてもまったく不思議ではありません。どんなに健康に自信があったとしても、脂肪肝は「自分だけは大丈夫だろう」とは言っていられない病気なのです。

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