朝、起きてから朝食を摂りジムに行く。夜、仕事終わりに軽食を摂ってからジムに行く。などトレーニング前に食事を摂る方、多いと思います。そこでよく質問されるのが、「トレーニング前に何食べたらいいの?」といった話です。
恐らく、バナナやプロテイン、おにぎりあたりを召し上がっているのではないでしょうか。果たしてそれは正解なのか。
さまざまな調査が実施されている
コーヒーを飲んでから有酸素運動をすると、飲まずに運動するのと比べて、脂肪の燃焼が高まると報告されています。小規模な実験ではあったものの、午前中に運動すると脂肪の燃焼が約11%上がり、午後は29%高まりました。
この結果が正しいとしたら、午後のほうが運動の効果が出やすいことになりますね。
この他に、マウスを使った実験から、夕方に運動したグループは、朝に運動したグループよりも、エネルギー源として糖質ではなく脂質を使う割合が高いこともわかりました。
この分野の研究は歴史が浅く、厳密に実施するのが難しいこともあり、今もはっきりした結論は出ていません。ただ、時間帯によって運動の効果が違うことの背景には、1日を通じた、体温や自律神経の変化があると考えられています。
人の体温は、朝起きたときが低く、次第に上昇して夕方にピークとなり、夜に入ると下降します。体温が上がれば血流がよくなって、筋肉がほぐれるため、体を動かしやすくなるでしょう。
また、夕方は交感神経の活動が高まり、脂肪が燃焼しやすくなります。これらの変化にかかわっているのが、体内時計というしくみです。

夕方以降の運動は脂肪が燃えやすいのか~
朝の運動も良いことはある!
夕方は運動する時間がないという人も、がっかりしないでください。
朝でも昼でも、運動すれば効果はあります。朝日を浴びながらウォーキングをすると、自律神経のバランスを整え、心身をリラックスさせるセロトニンという物質が脳で分泌されます。
また、朝日をしっかり浴びれば、その14〜16時間後に睡眠ホルモンであるメラトニンが作られて、睡眠の質が高まることもわかっています。
質のよい睡眠は減量の強い味方です。時間帯にこだわるより、無理なく続けられる時間を選びましょう。平日は夜、休日は朝と、日によって変えてもよいですね。
さて、仕事帰りに運動するとなると、大部分の人は夕食の前ということになるでしょう。
空腹で運動すれば、交感神経の働きで空腹感が薄れるため食べすぎを予防できる、という説明をみかけることがありますが、じつは、食後に運動するほうがよいのです。
マウスをもちいた実験から、運動後に餌を食べさせた場合と、餌を与えてから運動させた場合では、筋肉のつきかたに差があることが示されています。餌を食べたあとで運動するほうが、明らかに筋肉が大きくなりました。

食べてすぐに運動した方が筋肉になるのか~
なぜ食後に運動が良いの?
さらに、食後にウォーキングをすると、中性脂肪と血糖値が上がりにくいという報告もあります。血糖値が急激に上がると、ブドウ糖が脂肪に変わりやすくなりますが、食後に歩くことで、この反応を抑えることができるわけです。
2014年に実施された研究では、肥満した糖尿病患者さんを3つのグループに分けて、マシンを使った筋トレを異なるタイミングで実施してもらい、血糖値と中性脂肪の変化を比較しました。
すると、まったく運動しなかったグループと比べて、夕食前に運動したグループは血糖値の上昇が18%低く、夕食後に運動したグループは30%低いことがわかりました。
中性脂肪も、運動なしグループより食前グループが、食前グループより食後グループのほうが少なかったのです。
また、グラフからわかるように、食後グループの血糖値は、運動開始後1時間30分にわたって低いままでした。

通常、食事をすると血糖値が上昇し、健康な人では食後1時間、糖尿病の人は食後2時間30分ごろにピークとなります。このうち1時間30分であっても血糖値の上昇を抑えることができれば、減量にも有効でしょう。
この実験で、食後グループは夕食の45分後に筋トレを開始しました。食べた直後は食べ物を消化吸収するために、胃腸に血液が集まっています。この状態で運動すると、血液を大量に筋肉に送ることになり、消化不良を招くからです。食後に運動する人は参考にしてください。
空腹時に運動する際の注意点
この逆に、空腹時に運動するのは、とくに血圧が気になる人は要注意です。朝起きて1~2時間後と、夕方から夕食どきは血圧が上がりやすいうえに、空腹のまま運動すると心臓に負担がかかるからです。
高血圧を治療中の人、血圧が高めの人、そして運動に慣れていない人は、これらの時間帯を避けるか、お腹に少し何か入れてから運動するのがおすすめです。
生活パターンは人それぞれ。運動する時間を自由に選べる人のほうが少ないと思いますが、できる日だけでも、早めに夕食を終え、一休みしてからの運動を心がけてください。
細切れ運動はおろか、部屋の掃除でも脂肪が燃えることからわかるように、日常生活には、「痩せるチャンス」がまだまだ隠れています。
コメント